よろ)” の例文
ほしいままに寒風が通り、湖水の光もそれをよろう山嶽も、その山嶽の上に無限に畳まって見える山嶽の雪も、ついに僕をして大戦後に起った熱烈難渋な芸術にはしたしましめなかった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
兵はもう暗いうちから起きて、馬には草飼い、身にはよろい、そして腰兵糧までつけて、主人の出るのを待っていた。今朝、法養寺に勢揃いし、諏訪すわを立って、甲府に向う。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松の翠はだ色ばかりが佳いのではなく、その樹の姿がこの上もなく勢があって、その枝は四方に張り、その幹は天半に聳え立って亀ッ甲の皮をよろい、そのありさまが最も強健勇壮です。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そして冬月その葉の小葉は落ち去ってもなお鉤刺をよろうその主軸ならびに枝軸には依然としてその鉤刺が残り、その刺体は確かと茎に固着して脱去しない。ゆえに四季を通じていつも有効である。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)