かえ)” の例文
正気にかえると見えて、お浦が動き出した。肉附きのよい、ムッチリとした腕を、二本ながら、夜具から脱き、敷き布団の外へ抛り出した。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、いざ天下の合戦となると、これが皆、一かどの錆槍さびやりとボロよろいをかついで、陣借りして、真人間に生きかえるのだ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとその時のおばあさんの喜びは非常なもので、可愛い孫の今死んでしまったのがまたかえって来たと言って大きな声を立ててよろこびますから、暫く静かにしろと言ってだんだんその脳髄
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
きょう限り、旦那ともお別れですが、こんど何処かでお目にかかるときは、きっと、生れかえった人間となっていることを、かたくお約束しておきます。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
念のため、端公のふところの押送おうそう文を調べてみろ! そして早く早く覚醒薬さましぐすりだ! 李立! もしかそれで生きかえらなかったら、てめえも生かしちゃおかねえぞ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱実は、すぐ息をふきかえした。清十郎は宿舎やどの者に負わせて、人目から逃げるように旅舎へ帰って行った。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手と、脚とを持ち合って、ふなべりから、青い波底へ沈めかけようとした時である。とんと、舟げたのかどで、背ぼねを打たれたとみえて、耀蔵は、偶然にも、呼吸いきをふきかえした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
門の外へ出て、芽柳の上の夕星を仰いで、ほっと、かえったような心地だった。すると、樹蔭こかげから、白壁みたいな顔にみだらな笑みをもって、にやにや、近づいてきた女が
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
「とうとう、来てしまいました。……けれど、これでほんとの人間にかえった気がします」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
記憶がふっとれている。そして、二十七歳の初春はるをもっていま生れかえった感じである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「勿体ない、おれをうまかえらせてくれた師に対して、悪口あっこうをたたくと承知せぬぞ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呼吸いきをふきかえしてからというものは、苦痛にたえかねて暴れまわるので、やむなく、門下たちは帯を解いて、彼の体を戸板にしばりつけ、四隅を持って、葬式のように暗然とあるき出した。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いい湯だよ。……ああ生きかえったような気がする」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はやく毒消シでもませて、息を吹ッかえさせてやれよ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「げッ、それでは、息をかえしたのか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)