甚深じんしん)” の例文
私が初めて甚深じんしんの感動を与えられ、小説に対して敬虔けいけんな信念を持つようになったのはドストエフスキーの『罪と罰』であった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
この方法こそ五じょくの悪世において、その場で成仏解脱げだつを遂げ得るところの甚深じんしん微尠びみょうの方法であると教えたのであります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
むしろ美醜両面を併写へいしやせる真個の「我」を描写したる底の作物にこそ甚深じんしんの満足を感ずべきにはあらざるか。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
おのれは其一生を聽きしこと人よりも甚深じんしんなれば、よしの山に退きて身に過ぎたる財を蓄へしこと、西行菴建立のこと、句集のこと、今またこの亡き骸を埋むる遺言のこと
山家ものがたり (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
経典翻訳者の甚深じんしんなる苦心と労力に対して、満腔まんこうの感謝の意を表さねばならぬと思います。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
有名な弟子がついたのもこの時以後であり、諸国の為政者に説いて回ったのもこの時以後である。天命を知るの一語は孔子の生涯にとっては甚深じんしんの意義を蔵する。これがそれらの人々の主張である。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
しかもその「空」は仏教のエキスです。したがって空という文字を説明するとなると、なかなか容易なことではありません。しかもその甚深じんしんなる空を、観自在菩薩かんじざいぼさつは、親しく体験せられたのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
俗人ぞくじんをしふる功徳くどく甚深じんしん広大くわうだいにしてしかも其勢力せいりよく強盛きやうせい宏偉くわうゐなるは熊肝くまのゐ宝丹はうたん販路はんろひろきをもてらる。洞簫どうせうこゑ嚠喨りうりやうとして蘇子そしはらわたちぎりたれどつひにトテンチンツトンの上調子うはでうしあだつぽきにかず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
そこに無限の甚深じんしんなる意味を見出すものであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)