瓦師かわらし)” の例文
実は、鳥越の屋敷の屋根が痛んだから瓦師かわらしを呼んだところが、総葺替そうふきかえにしなければならないと言うので、かなり手数がかかる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「山上の仁王門にご修理がございますので、そこに泊りこみで働いている塗師ぬし瓦師かわらし仏師ぶっしなどの職人方へ売りにいきますんで」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はそのくらい吝嗇けちな家主が、屋根がると云えば、すぐ瓦師かわらしを寄こしてくれる、垣が腐ったと訴えればすぐ植木屋に手を入れさしてくれるのは矛盾だと思ったのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わっしは元より今戸いまど瓦師かわらし、とてもあいつに歯は立ちませんが、またお千絵様の境遇をよそに見てもいられねえ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちゃんは、これがために滅多めったに表へ出て遊んだ事がない。もっとも近所はあまり上等でない。前に塩煎餅屋しおせんべいやがある。その隣に瓦師かわらしがある。少し先へ行くと下駄げたの歯入と、かけ錠前直じょうまえなおしがある。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
瓦師かわらしは、帰化人の一観いっかんという唐人が担当していた。中国の焼法によるとかいう。その瓦焼の窯場かまばは湖畔にあって、夜も昼も、松薪まつまきのけむりを揚げていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾軒かの掘立小屋ほったてごやが、その辺に散在していた。打出瓦うちでがわらを焼く瓦師かわらしの小屋である。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)