げん)” の例文
孔明の父けいは、泰山の郡丞をつとめ、叔父のげんは、予章よしょうの太守であった。まずその頃も、家庭は相当に良かったといっていい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お辰かと珠運もだきしめてひたいに唇。彫像が動いたのやら、女が来たのやら、とわつたなく語らば遅し。げんまたげん摩訶不思議まかふしぎ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あの「大名物おおめいぶつ」は皆数銭もしない日常品たる「下手物」である。茶室といえども民家の美が規範である。彼らは「民」の世界に最高な美の姿を見た。渋さの美、げんの美を見た。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
どんよりとくもった、今にも何か降り出しそうな空模様のした夕方だった。私は四時に店を出たが、学校の始業までにはまだ二時間もあるので、学校の近くのげんの友人の下宿を訪ねた。
佐々さっさげんろう、前山彦七、海塚主馬うみづかしゅめ西御門にしごもん八郎右衛門、間瀬徹堂ませてつどう、等、等、等。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
毛の長い方は、かねて瀬川からきいていた鮮人の社会主義者でげんというのであるが、普通には日本名前の松本で通っていた。今一人の背の高い方は玄の友達でちょうさんというのであった。
そうしてそれが東洋の静かな精神に適合したのは云うまでもない。それは美の宗教であった。あの「渋さ」の世界は、老子ろうしの言葉を使えば「げん」の世界と呼び得よう。「渋さ」は究竟くっきょうな美の相である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そしてそこで私は、その洗面所に近い部屋に昨夜紹介されたげんのいるのを見た。