猶予ため)” の例文
旧字:猶豫
と片手に燐寸マッチを持ったと思うと、片手がと伸びて猶予ためらわず夫人の膝から、古手紙を、ト引取って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と見ると、左側から猶予ためらわないで、真中まんなかと寄って、一帆に肩を並べたのである。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
欄干の折れた西の縁の出端はずれから、袖形に地のなびく、向うの末の、雑樹ぞうき茂り、葎蔽むぐらおおい、ほとんど国を一重隔てた昔話の音せぬ滝のようなのを、猶予ためらわずくぐる時から、お誓が先に立った。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白の角通かくとおしの縮緬ちりめん、かわり色のもすそを払って、上下うえした対のあわせかさね黒繻珍くろしゅちんに金茶で菖蒲あやめを織出した丸帯、緋綸子ひりんず長襦袢ながじゅばん、冷く絡んだ雪のかいなで、猶予ためらう色なく、持って来た銚子を向けつつ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かねてしたるもののごとく猶予ためらわず腰を落着けた、……松崎は、美しいひととそのつれとが、去る去らないにかかわらず、——舞台の三人がかねをチャーンで、迷児の名を呼んだ時から、子供芝居は
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酒井は猶予ためらわず、水薬を口に含んだのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい。」と猶予ためらわず答えたのである。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むすばむとして猶予ためらいぬ。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神崎は猶予ためらわで
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神崎は猶予ためらはで
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)