物尺ものさし)” の例文
さっきからの口ぶりで大抵判っているが、おめえは行く行くその古着屋の店へ坐り込んで、一緒に物尺ものさしをいじくる積りでいるんだろう。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
外科医にも制作的情熱は盛でしてね、先生は忙しいのにわざわざ室へ来て、小さい物尺ものさしを傷の横に当てて持っていて、写真をとらせました。
そして、酒甕と酒甕との間にさしこんであった物尺ものさしをとって上酒の方の甕に突きこみ、中身の分量をはかっていたが
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
背は六尺あったというが、物尺ものさしで計ってのことではあるまい。いわゆる六尺豊かである。五尺六、七寸はそう見える。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はかの物尺ものさしによつて計らるが如き品行方正よりも寧ろロマンチツク時代の恋歌、ドンフハンとヴイナス夫人の恋
婦人解放の悲劇 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
裁判官は物尺ものさしのやうな厳正な顔をして言つた。孝行息子は呆気にとられたが、さてどうする事も出来なかつた。
自分は立膝をして、物尺ものさしを持って針山の針をこつこつ叩いて、順々に少しずつ引っこませていたが、ふと叩きすぎて、一本の針を頭も見えないようにしてしまう。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
だのに、人の信仰の度を越え、その常軌を逸したものは、普通人が持つ心の物尺ものさしを以てしては計ることの出来ないものに違いないのです。問題の人竜造寺長門守がそれでした。
物尺ものさしを貸してくれ。どれ/\、鎌のは二尺五寸か、鍬のは三尺八寸、それでよし」
その窓掛けの青い色までが、人間の物尺ものさしにはもとより、普通の人の想像そのもののなかにもちよつとはありさうもないほどの細かさで、而も実に明確に、彼の目の前に建てつらねられた。
自分の領分の薯の芽と他の領分のそれとを比較して互いに自慢の仕合いをした。物尺ものさしを持ち出して芽の長さをはかったり、芽が長く見えるようにそっとあたりの土をきのけておいたりした。
猿の頭蓋骨ずがいこつや、竜のおとし児の黒焼を売る黒焼屋があったり、ゲンノショウコやドクダミを売る薬屋があったり、薬屋の多いところだと思っていると、物尺ものさしやハカリを売る店が何軒もあったり
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
坊ちやんは壁に足を投げかけて、仰向きにお転びになつたまゝ、物尺ものさしを持つて畳を撫でてお出でになる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「おい、誰か早く物尺ものさしをもつて来てんか。」
物尺ものさしを出してつもつて見る。一丈のたけだからたつぷり取つても一尺は余るであらう。幅は二た幅にして、両方へ二寸ばかりは縫ひ込まなければ広すぎるかも知れない。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)