“爾(さ)” の例文
罪人が解りたらば先(ま)ずほッと安心すべきところなるに目科は爾(さ)は無くて痛く失望の色を現わし开(そ)を体好(ていよ)く紛らさんため例の嚊煙草の箱を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
人種の気象は風土と相伴ふさうだが、我々犬族も多分爾(さ)うらしいのは日本人と日本犬と何から何までが能く似ておる。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
『一週間以内に是非とも復讐試合をするから、爾(さ)う思つて呉れ給へ』
要(よう)も無き唯(ただ)一個(ひとつ)の空瓶の口なれば是が爾(さ)までの手掛りに為(な)ろうとは思わねど少しの手掛りをも見落さじとの熱心より之も念の為にとて拾い上げしなれ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
爾(さ)ういふ犬社会に通じた方が矢張日本種は中々好いと仰しやつて俺を頭(かしら)に都合三疋御扶持(ごふち)を給はつてゐる。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
彼は余の顔を見て「オヤ丸部さんですか」と云ったが「サアお這入りなさい」とは言わぬ、寧ろ「お帰りなさい」と云い度げに構えて居る、余も爾(さ)る者だ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
爾(さ)れど彼れ翌日は静かに余が室に入来(いりきた)り再び礼を繰返したる末、意外にも余に晩餐の饗応せんと言出(いいいで)たり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
前後左右に様々の機械が有って、動く度に突き当り、身を伸す事も出来ぬ、爾(さ)りとて背後に引き返さすには早や緑盤が塞がって了い、上にも下にも是より先へ行く可き道はない
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)