てゝ)” の例文
てゝ親は先刻さきほどより腕ぐみして目を閉ぢて有けるが、あゝ御袋、無茶の事を言ふてはならぬ、我しさへ初めて聞いて何うした物かと思案にくれる
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
併しそんなことは——お信さんが乞食の子であつたとか、てゝなし児を生んだとかいふやうなことは、私のお信さんに対する感情に、何等の影響も与へなかつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
けれど船乗りとしては割に肌が白くつてぽつてりとした肉持ちが由藏を喜ばせた。それ迄にてゝなし子を産んでゐたといふことなどはもとより由藏を不愉快にはしなかつた。
泥の雨 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
産み落した暁にお前の方で育てる事が出来なければおらア方で里に遣ってもえかくするが、それともお前の方で引取るとも、金を附けてわきへくれててゝなしにするのは不便ふびんだが
そのてゝ親は早くに死くなつてか、はあ母さんが肺結核といふを煩つて死なりましてから一週忌の來ぬほどに跡を追ひました、今居りましても未だ五十
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)