煮切にえき)” の例文
けれども、こっちぢゃ煮切にえきらない、というのがね——あの、にはおっかさんがありません。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それと同時に須永すなが従弟いとこと仮定された例の後姿うしろすがたの正体も、ほぼ発端ほったんの入口に当たる浅いところでぱたりと行きとまったのだと思うと、その底にはがゆいようなまた煮切にえきらないような不愉快があった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かろう、翌日あしたにも、と酒のいきおいで云ったものの、用もたたまっていますし、さあ、どうしようか、と受けた杯をよどまして、——四五日経ってからの方が都合はいのだがと、煮切にえきらない。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へい。」と煮切にえきらない返事へんじをして、すこ退すさつて、猶豫ためらひながら
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とそのに及んで、まだ煮切にえきらない事を私が言うと
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)