煙火はなび)” の例文
「それは本気か」煙火はなびの為に真青に彩られた廣介の顔の、目ばかりが紫色にギラギラと輝いて、突き通す様に千代子を睨みつけました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
香椎六郎はこらえ兼ねて、急造レンズへ手をかけようとすると、不意に、レンズの下で、玩具おもちゃ煙火はなびを鳴らしたような、不思議な爆音が聞えます。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ボースンは落ちて来た煙火はなびの人形のように、ガッカリしていた。彼は、ドーアのところへ立って、マゴマゴしていた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
煙火はなびのように地上をぶん廻り、切り口から、龍吐水りゅうどすいからほとばしる水のように、血が迸り、紙帳へかかるのが見えた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
煙火はなびの催しの時に、殿様が郡山から、常右衛門が、反対側から、煙火見物の橋上へ、同時に現れて、挨拶をし、それから、打揚げにかかったのだと、よく父が語っていた。
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
それは毛皮から出る煙火はなびの火花のやうでした。みんなは驚いて其のきれいな猫を見てゐました。
或晩龍馬と二人でこツそりと小舟にのり、島へ上つて煙火はなびを挙げましたが、戻つて来ると三吉さん等が吃驚びつくりして、今方向ふの島で妙な火が出たが何だらうと不思議がつて居りました。
ある晩縁側へ出て庭で煙火はなびをあげるのを見てたら綺麗な女の人が菓子を包んできて
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
マッチ箱を一五くらいならべておいて、煙火はなびのように順々に火を吹出させたり、バナナや何んかをきざんで舞踏人形の形にこしらえたりしましたの。その人はアインドール・スミスといいました。
仕掛け煙火はなびの煙から
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
向日葵ひまわりの蕊の穴の中には、薄い真鍮板で包まれた、煙火はなび仕掛の爆薬があって、レンズで集めた太陽の熱を長く当てると、中の爆薬が独りでに発火して
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
黒漆の縁の森林からは、絶えず点々と火の光が、あるいは酸漿ほおずきのようにあるいは煙火はなびのように、木の間がくれに隠見して見えた。松火たいまつ提灯ちょうちんの火なのである。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あれが煙火はなびの筒なんだよ。この池の下に私達の町があって、そこから私の家来達が花火を揚げているのだよ。ちっとも、不思議なことも、怖いこともありゃしない
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)