潸々さめ/″\)” の例文
唯一度私が小さい桶を擔いで、新家の裏の井戸に水汲に行くと、恰度ちやうど其處の裏門の柱に藤野さんが倚懸よりかゝつてゐて、一人潸々さめ/″\と泣いてゐた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
九郎兵衞は聞て大いに悦び我等儀われらぎ段々だん/\不仕合ふしあはせ故今は古郷こきやう忘れ難く何か此上は娘お里を手前の女房になし親の名跡みやうせきを立て呉と潸々さめ/″\なみだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日本につぽんわかひとは、いま鸚鵡あうむ一言ひとことくかかないに、やりをそばめたはづかしい、ばつたりゆかに、俯向うつむけにたふれて潸々さめ/″\くんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其中には村端の堀立小屋の娘もあつて、潸々さめ/″\泣いてゐたが、私は、若しや先生は私にだけ證書を後で呉れるのではないかといふ樣な、理由もない事を心待ちに待つてゐた樣であつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)