滑々すべすべ)” の例文
所で、その鉢というのが、相当目方のある上に滑々すべすべしていて扱い悪い代物と来ている。手をかける所は縁以外にはない。
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの龍のような不格好ぶかっこうな老樹が、もし滑々すべすべした肌をもっていたら、それはとても見られたものではないでしょう。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それは漆喰しっくいで固めてあるらしく、滑々すべすべした表面を持っていたが、果然指先に、壁の面から飛びだした固いものを探りあてた。それは小さいスイッチであった。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あの滑々すべすべとした乾版の片隅に、ぽつんと薄黒い汚点しみが浮くと急にそれが、乾版一杯に拡がって、不思議な映像を造ってゆく時の、あの何ともいえない期待に、強い魅力を感じ
魔像 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
白いほおが、滑々すべすべと寄つた時、くちばしが触れたのであらう、……沢は見る/\鼻のあたりから、あの女の乳房をひらく、鍵のやうな、鸚鵡の嘴に変つて行く美女たおやめの顔を見ながら、甘さ
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ごく軽くて、滑々すべすべして、いい手触りだ。ひんやりとして……少し気味がわるい……何だか神秘な感じのするこの眠っている兇器は、短刀なんかとちがって、危険が外に顕われていない。
ピストルの蠱惑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
っ!」と私が眼をみはった途端、ユアンはさらに左の頬の揉み上げをむしり取って見せた。耳の下まで長々と生え下っている揉み上げの代りにそこには滑々すべすべした青年らしい美しい皮膚が現れ出た。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
周囲は高くて滑々すべすべで登る事の出来ない塀にとりかこまれて、塀の上には盗難よけの釘が列をつくっている。この庭は、百人に近い犯罪家に首をつけ狙われている男にとっておそらく悪るい庭ではない。
し、神仏もあれば、夫婦もある。蝋燭が何の、と思う。その蝋燭が滑々すべすべと手に触る、……扱帯しごきの下に五六本、襟の裏にも、の下にも、幾本となく忍ばしてあるので、ぎょっとしました。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)