涅槃会ねはんえ)” の例文
しば増上寺ぞうじょうじ涅槃会ねはんえへ往っていた権八郎がその夜霍乱かくらんのような病気になって翌日歿くなり続いて五月二十七日になって女房が歿くなった。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
古郷ふるさと涅槃会ねはんえには、はだに抱き、たもとに捧げて、町方の娘たち、一人が三ツ二ツ手毬を携え、同じように着飾って、山寺へ来て突競つきくらを戯れる習慣ならいがある。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時候は立春、暮春ぼしゅん余寒よかんあたたかうらら長閑のどか日永ひながの類をいふ。人事は初午はつうま二日灸ふつかきゅう涅槃会ねはんえ畑打はたうち雛祭ひなまつり汐干狩しおひがりの類をいふ。天文は春雪、雪解、春月、春雨、霞、陽炎かげろうの類をいふ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「今日は十二日だったね、——もう涅槃会ねはんえか、これで寒さもおしまいだね」
山椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
寺になければならぬ涅槃像、年に一度涅槃会ねはんえにかけて、世尊入滅の日をしのぶべき涅槃像が質屋の壁にかかっている。在家ざいけの人の持つまじきものだから、寺の住持が金にでも困っててんしたのであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)