流行物はやりもの)” の例文
多寡たくわが厄病神のやうな流行物はやりもの——と鼻であしらつて來た平次も、庵室へ行つて見て、まるつきり豫想と違つて居るので驚きました。
三「えゝ、成程……お母さんちょいと手を私の袂の中へ突込つっこんで下さい、これが流行物はやりものだから何うでげしょう、このくらいでは」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
軽薄な細工物は云はばすたり易い流行物はやりもの、一流のみさをを立てゝおのれの分を守るのが名人気質だと云ふのが分らぬか、この不了簡者。
名工出世譚 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いかに虎列剌がこの節の流行物はやりものでも、吐瀉下痢はきくだして息をひきとれば、これも虎列剌ですはひどかろう。いってえ、おめえらの職業しょうべえはなんだ。……おい、よく聞け。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
このごろの相場として雌雄二匹で八両ならばやすいものです。十両から十四五両なんていうばかばかしい飛び値がありますからね。流行物はやりものというものは不思議ですよ
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それを馬で引かせてトット、トットと走らせ、一人前おいくら、先様せんさまお代りという仕組みで席料を取る、それが面白いと言って、流行物はやりものになり、われ乗り遅れじと、あの通りの大繁昌。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうしてその積分されたものの掛け値なしの正味はと言えば結局科学の収穫だけではないかという気がする。思想や知恵などという流行物はやりものはどうもいつも一方だけへ進んでいるとは思われない。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「うむ、町武家と申してな、江戸の流行物はやりものじゃ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
たかが厄病神のような流行物はやりもの——と鼻であしらって来た平次も、庵室へ行ってみて、まるっきり予想と違っているので驚きました。
うちのお師匠樣ばかりではございません。室内旅行はこの頃の都の流行物はやりものでございますよ。
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「倒幕の、何んのと、流行物はやりものにすぎぬ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
流行物はやりものと言へば、大道博奕ばくち舟比丘尼ふなびくに、お前の頭のやうに髷節まげぶしを無闇に右に曲げるのだつて流行物の一つらしいが、どうせろくなものは無いな」
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「このごろ流行物はやりものの押借りかと思って、初めは多寡たかをくくっていたのでございますが、なにしろ異人の生首なまくびをだしぬけに出されましたので、わたくしはびっくりしてしまいました」
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「惡い流行物はやりものだ。行つて見て下さいよ、親分」
「悪い流行物はやりものだ。行ってみて下さいよ、親分」
「近頃の流行物はやりものというと何だろうな、八」
「近頃の流行物はやりものといふと何だらうな、八」