注視ちゅうし)” の例文
うめはなはなののどかな村むらを、粟毛くりげ額白ぬかじろの馬をのりまわした糟谷は、当時とうじわかい男女の注視ちゅうし焦点しょうてんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
加瀬谷少佐は、戦車のはねとばす土を、頭からかぶりながら、熱心に、地下戦車の廻転錐のところを注視ちゅうしする。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
指さすかなたを注視ちゅうしすれば、おいしげる灌木林かんぼくりんをおしわけて、一個のぞうのような巨獣きょじゅうがすすんでくる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
じゅうぶん心得こころえている花前は、なんのもなくはね牛の乳をしぼってしまった。主人は安心あんしんすると同時どうじに、つくづく花前の容貌風采ようぼうふうさい注視ちゅうしして、一種の感じをきんじえなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そして入口の蔭から、第三十九号室の有様を、まばたきもせず、注視ちゅうししていた。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
隆夫のたましいは、まわるのをやめて、それを注視ちゅうしした。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大木はようやく矢野の顔を注視ちゅうしした。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それから、じっと鞄を注視ちゅうしした。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)