水汲みずくみ)” の例文
「いえ、裏の断崖の水汲みずくみ道をつたって、杉坂を越えれば佐竹さたけ様の御領分です。大丈夫みつからずに行って来られますわ」
峠の手毬唄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
春雨あがりの暖い日に、私は井戸端で水汲みずくみをしておりますと、おつぎさん——矢張やはり柏木の者で、小諸へ奉公に来ておりますのが通りかかりました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「絵描きに絵を描けというのは、水汲みずくみに水を汲めというのと同じことです、何なりと御意ぎょいに従って描きましょう」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一度何処どこか方角も知れない島へ、船が水汲みずくみに寄つた時、浜つゞきの椰子やしの樹の奥に、うね、透かすと、一人、コトン/\と、さびしくあわいて居た亡者もうじゃがあつてね
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爺いさんは綺麗きれいな家に這入った嬉しさに、田舎出の女中には、水汲みずくみ飯炊めしたきだけさせて、自分で片附けたり、掃除をしたりして、ちょいちょい足らぬ物のあるのを思い出しては、女中を仲町へ走らせて
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
(一四)暗中水汲みずくみ
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
以前姉に連れられて見て廻った味噌倉も、土蔵の白壁も、達雄の日記を読んだ二階の窓も、無かった。梨畑なしばたけ葡萄棚ぶどうだな、お春がよく水汲みずくみに来た大きな石の井戸、そんな物は皆などうか成って了った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
草刈くさかり水汲みずくみいたします。おそばにいとう存じます。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)