気褄きづま)” の例文
旧字:氣褄
一々小言を仰しゃって下せえやし、お久、お内儀さんもう仰しゃって下さるからなんだが、店へ出てお客の機嫌気褄きづまの取れる人間じゃアねえが
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
房州の百姓の娘、殿様に近付いて怨みを報いたいばかりに、相沢様に取入って、心にもない機嫌気褄きづまを取りました。
幹彦君にしろ私にしろ、あの年頃から先輩の鼻息を窺つたり機嫌気褄きづまを取つたりするやうな意気地なしでは仕方がない。世故や礼儀は年を取るうちに自然に覚える。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
叔母一人のに入ればイザコザは無いが、さて文三には人の機嫌きげん気褄きづまを取るなどという事は出来ぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
といふよりは、夫が非職の郡長上りか何かで、家が余りゆたかで無いところから、お柳の気褄きづまを取つては時々うして遣つて来て、その都度家計向うちむき補助たすけを得てゆくので。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「寮では相変らずやってるのね。それにつけても、あたし、池上さんとの縁談のはなしはどうかと思って来るのよ。あたしあんな人の機嫌気褄きづまを取れる自信はなくなったわ」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、お三婆さんは、妙にねばっこい調子で、気褄きづまを取るようにいって
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いろ/\と女の機嫌気褄きづまを取り、色男に反物たんものを買ってやったり、二人を伴れて芝居に出かけたり、或る時は其の女と其の男を上座へ据えて、例の如く自分がお太鼓を叩き
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
隅「私は大きな物でなくっちゃア酔わないから、大きな物でほっと酔って胸を晴したいの、いやな客の機嫌気褄きづまを取って、いやな気分だからねえ、富さん今夜は世話をやかせますよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
云わんにしろ武士は相見互いだ、貴様は吉原町の幇間たいこもちじゃアないか、客の機嫌気褄きづまを取って、祝儀を戴き、其の日を送る幇間たる身の上でありながら、何んだ屁っぴり侍とは、不埓な奴だ