毛衣けごろも)” の例文
せめてこの淡灰色の斑入ふいり毛衣けごろもだけはちょっと洗い張りでもするか、もしくは当分のうち質にでも入れたいような気がする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(マコはクリスト伝第七章二五以下にこの事実を記してゐる。)バプテズマのヨハネは彼の前には駱駝らくだ毛衣けごろもいなごや野蜜に野人の面目をあらはしてゐる。
続西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わしは懺悔くひあらためて洞窟へはいり、身には粗い毛衣けごろもを著け、夜昼の別ちなく神に祈りを捧げよう。
白木屋の店頭に佇立たたずむと、店の窓には、黄色の荒原の処々ところどころに火の手の上っている背景を飾り、毛衣けごろもで包んだ兵士の人形を幾個いくつとなく立て並べてあったのが、これ又わたくしの眼を驚した。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
星でもなく 犀でもなく 毛衣けごろもをきた聖人の類でもありはしない。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
栗鼠りす毛衣けごろも脱ぎすてて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あやつゝめる毛衣けごろも
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
車屋の黒の両眼から北風に乗じて流れる目糞とえらぶところなき身分をもって、この淡灰色たんかいしょく毛衣けごろもだいなしにするとはしからん。少しは考えて見るがいい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
栗鼠りす毛衣けごろも脱ぎすてて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
猫だって頭の刈り方を二十通りも考え出す日には、こう気楽にしてはおられんさ。気楽になりたければ吾輩のように夏でも毛衣けごろもを着て通されるだけの修業をするがよろしい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)