此方こッち)” の例文
其を此方こッちから見て居ると、お糸さんが何だか斯う私の何かのような気がして、嬉しくなって、斯うした処も悪くないなと思う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
第一中隊のシードロフという未だ生若なまわかい兵が此方こッちの戦線へ紛込まぎれこんでいるから⦅如何どうしてだろう?⦆とせわしい中でちら其様そんな事を疑って見たものだ。
長「そんな事はいから此方こッちへ来ねえ」
母は如何どうしたろうとうしろを振向く途端に、「おお作か」、という声がにわか寂然しんとなった座敷のうちに聞えたから、又此方こッちを振向くと、其処に伯父が居るようだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そのかざぬしも全くもうとろけて了って、ポタリポタリと落来る無数のうじは其処らあたりにうようよぞろぞろ。是に食尽はみつくされて其主が全く骨と服ばかりに成れば、其次は此方こッちの番。
「戯談は除けて、幾程美しいと云ッたッてあんな娘にゃア、先方さきもそうだろうけれども此方こッちも気が無い」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あんなもんでも家大人おとッさん血統ちすじだから今と成てかれこれ言出しちゃ面倒臭めんどくさいと思ッて、此方こッちから折れて出てれば附上ッて、そんな我儘わがまま勝手を云う……モウ勘弁がならない
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此方こッちが一番さんで、それから二番さん三番さんと順になるンですから何卒どうぞ……」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)