櫓声ろせい)” の例文
六挺のは、ただちに櫓声ろせいを揃えて波を切った。——播磨灘はりまなだを西南へ、潮流にも乗せて、その舟影は、みるまに海光のうちへうすれて行った。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余等はみちびかれて紅葉館のはたともに立てた小舟に乗った。宿引は一礼いちれいして去り、船頭はぎい櫓声ろせいを立てゝぎ出す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もう夕陽にいろどられた沖のほうから、いさましい櫓声ろせいがして、吾れさきにと帰って来た漁船からは、魚を眼まぐろしくあげて、それを魚市場の沙利じゃりの上へ一面に並べた。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
人里を離れてキィーキィーの櫓声ろせいがひときわ耳にたつ。舟津の森もぼうっと霧につつまれてしまった。
河口湖 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
櫓声ろせいして高らかに唱連うたいつれて、越中まいを満載したる五六そうの船はこぎ寄せたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)