がまえ)” の例文
なぜというに、目をきょろりと出額おでこの下から、扇子がまえで、会釈をしたように思ったからである。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に、露、時雨、霜と乾いて、日は晴れながらひさしの影、自然おのずからなる冬がまえ。朝虹の色寒かりしより以来このかた、狂いと、乱れと咲きかさなり、黄白の輪揺曳ようえいして、小路の空は菊の薄雲。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょいと道具を持って来てひげだけあたってくんなよ、と言種いいぐさが横柄な上、かねて売れたがまえ顔色がんしょくを癪に障らしていた、稲荷いなりさんの紋三もんざ、人を馬鹿にすンな、内に昼寝をしてる処へ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう陳列すると、一並べ並べただけでも、工賃作料したたかにして、堂々たる玄関がまえの先生らしいが、そうでない。挙げたのは二十幾年かの間の折にふれた作なのである。第一、一家を構えていない。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)