業平朝臣なりひらあそん)” の例文
業平朝臣なりひらあそんから、先々代染井右近、當代染井鬼三郎の名を連ねた、牙軸げぢく鳥の子仕立、金襴きんらん表裝の系圖書が何處へ行つたかわかりません。
燕子花かきつばたさく八橋も、渡れば渡る渡りがね、そこへあとから追って来た、業平朝臣なりひらあそん狩衣かりぎぬや、オーイ、オーイと呼びかける
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
業平朝臣なりひらあそんの(名にしおはゞいざこととはむ)歌の心をまのあたり、鳥の姿に見たいと言ふ、花につけ、月につけ、をりからのきく紅葉もみじにつけてのおもよりには相違あるまい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だれも知った業平朝臣なりひらあそんの古歌であるが、感傷的になっている人々はこの歌に心を打たれていた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「山口(隣村)から見物に来たおじさんがおもしろいことを言ったで——まるで錦絵にしきえから抜け出した人のようだったなんて——なんでも、東下あずまくだりの業平朝臣なりひらあそんだと思えば、間違いないなんて。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なるほどなあ、こりゃアすごい! 男の俺でさえこりゃア参る! 美しいものじゃ、業平朝臣なりひらあそんじゃ! ……やい!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ところが費ひ切れないほど金があるから、何處へ行つても業平朝臣なりひらあそんの御通りで御座いだ」
ただの恋愛談を技巧だけでつづってあるような小説に業平朝臣なりひらあそんを負けさせてなるものですか
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しぞ思ふ——業平朝臣なりひらあそんの有名な和歌は申すまでもないことでありますが、八ツ橋は名高い歌枕の土地ゆえ、この外にいろいろ有名な和歌が、うたわれていることでございましょうな
真間の手古奈 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
王朝時代にあづまに下つた、業平朝臣なりひらあそんすゑだとも言ひ、染井村に土着して、代々豪士として勢威を振ひ、太田道灌だうくわんが江戸にきづいた頃は、それに仕官して軍功を樹てましたが、徳川家康入府の際には
業平朝臣なりひらあそん恋仇こいがたき
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)