桜田門さくらだもん)” の例文
夜は提灯行列ちょうちんぎょうれつが日比谷公園から上野公園まで続いて、桜田門さくらだもん付近馬場先門ばばさきもん付近はほとんど人で埋めらるるくらいであったという。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
やがてその葉が雪にぬれて、かえって一層の輝きを見せるころには、江戸方面からの人のうわさが桜田門さくらだもん外の変事を伝えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これにたいする安政の大獄、翌年大獄始末を終えたか終えぬに桜田門さくらだもんの変、やがて水戸斉昭その人も死んで、雄藩ブロックは充分に独自化した。
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
今日こんにちの人はもちろん知るまいが、麹町の桜田門さくらだもん外、地方裁判所の横手、のちに府立第一中学の正門前になった所に、五、六株の大きい柳が繁っていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
伯父は捜索につかれ切って半病人になってしまった。そこへ警視庁からかさねての呼び出しが来たので今朝、めいのダリアを介添かいぞえに桜田門さくらだもんへ行ったというのだ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
叛乱はんらんに参加したのは、近衛歩兵このえほへい第三連隊・歩兵第一、第三連隊・市川野戦砲やせんほう第七連隊などの将兵の一部で、三宅坂みやけざか桜田門さくらだもんとらもん赤坂見附あかさかみつけの線の内側を占拠せんきょ
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そのはずれに立っている桜田門さくらだもん真白まっしろな壁が夕方前のやや濁った日の光に薄く色づいたままいずれが影いずれが実在の物とも見分けられぬほど鮮かに水の面に映っている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これ等は微笑せずにはゐられぬ見解であるが、桜田門さくらだもん外の変に際して日本人の復讐崇拝ふくしうすうはいを論じ、忠臣蔵ちゆうしんぐらの芝居などの民衆に与へる影響を論じたあたりは、なかなかおもしろい議論である。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
桜田門さくらだもんをくぐって、宮城前の広場を彼は前よりはいくらか歩調を早めて、馬場先門ばばさきもんの仮庁舎まで歩いていった。そして、長い廊下を強力犯係の部屋の前まで行って、ドアに手をかけようとすると
五階の窓:03 合作の三 (新字新仮名) / 森下雨村(著)
やがて来かかったのは桜田門さくらだもんの木戸。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
桜田門さくらだもん事変から戊辰ぼしん戦争にいたる大小幾多の政争や内乱をそのあいだにさしはさんで、混乱しきっている日本幣制を、金銀両本位の円制度に切替るというはなれわざが
明治の五十銭銀貨 (新字新仮名) / 服部之総(著)