桜木町さくらぎちょう)” の例文
外へ出たら、このまま家へかえるのが惜しいような気がしたから、二人ふたりで電車へ乗って、桜木町さくらぎちょうの赤木の家へ行った。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夕立の様なやかましい蝉の声を浴びながら上野うえのの森を越えて、私は久し振りに桜木町さくらぎちょうの住居に友人の橋本敏はしもとびんを訪ねた。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
交番もそんなに遠くはなく、桜木町さくらぎちょうの住宅街もついそこに見えているのだけれど、その一角は妙に真暗で、まるで深い森の中へでも這入った様な気持だ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先刻さっき、横浜駅前の(現今の桜木町さくらぎちょう駅)かねの橋を横に見て、いつもの通り、尾上町おのえちょうの方へ出ようとする河岸かしっぷちを通ると、薄荷はっかを製造している薄荷のにおいが、爽快そうかいに鼻をひっこすった
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
安請合やすうけあいをしたが、私はそれ丈けでは安心がならず、私自身も本田から聞いた春泥の最後に住んでいたという、上野桜木町さくらぎちょう三十二番地へ行って、近所で様子を探って見ることにした。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)