本色ほんしょく)” の例文
箇様な理想を含む故に端唄にもはひりたれど、俗気十分にして月並調の本色ほんしょくを現はせり。千代の朝顔の句よりもなほいやな心地す。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あるいはそのえんを訴うるによしなきを知るべからずといえども、偶然に今日の事実を見ればこそ、前年に乱を好みしは、その心事の本色ほんしょくに非ず
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
公園の一方にあらはれ候時こそ怪獣は物凄ものすさまじきその本色ほんしょくあらわし、雄大なる趣を備へてわれわれの眼には映じたれ。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
敬太郎は初対面の客を客と感じていないらしいこの松本の様子に、なるほど高等遊民の本色ほんしょくがあるらしくも思った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勉学の詩二十四章の如きは、けだし壮時の作と雖も、其の本色ほんしょくなり。談詩だんし五首の一に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
抽斎は天下多事の日に際会して、ことたまたま政事に及び、武備に及んだが、かくの如きはもとよりその本色ほんしょくではなかった。抽斎の旦暮たんぼ力を用いる所は、古書を講窮し、古義を闡明せんめいするにあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
また、持続してよろしからざるものなれば、政治の針路の変化するにしたがいて、学校の気風精神もまた変化せざるをえず。学問の本色ほんしょくそむくものというべし。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この輩が学者の本色ほんしょくを忘却して世変に眩惑し、目下の利害を論じて東走西馳に忙わしくし、あるいは勤王きんのうといい、また佐幕さばくと称し、学者の身をもって政治家の事を行わんとしたるの罪なり。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)