木綿物もめんもの)” の例文
田畑は勿論もちろん宅地たくちもとくに抵当ていとうに入り、一家中日傭ひやといに出たり、おかみ自身じしん手織ており木綿物もめんものを負って売りあるいたこともあったが、要するに石山新家の没落は眼の前に見えて来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今日阪神電車に乗ると、私の前にとしの頃は四十恰好の職人風らしい男が腰をかけてゐた。木綿物もめんものだが小瀟洒こざつぱりした身装みなりをしてゐるのにメリヤスの襦袢シヤツのみは垢染あかじんで薄汚かつた。
湯帰りと見えて、しま半纏はんてんの肩へ手拭てぬぐいを掛けたのだの、木綿物もめんもの角帯かくおびめて、わざとらしく平打ひらうちの羽織のひもの真中へ擬物まがいもの翡翠ひすいを通したのだのはむしろ上等の部であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)