きのう)” の例文
我はこの山脈に分け入って、きのうは月の清光を浴び、きょうは雲漫々たる無限を踏む、我といえる一個体、一霊魂
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ると二大蛇長十余丈で渓中に遇うてあいまとうに白い方が弱い、狩人射て黄な奴を殺した、暮方にきのうの人来って大いにありがたい、御礼に今年中ここで猟しなさい
西は筑紫つくしの海の果から、東は南部・津軽の山の蔭に及ぶまで、多くの農民の行事がほとんどわずかの変化もなしに、一時一様に行わるるは今なおきのうのごとくであって
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もっとも私がそのおんなにすれ違った、きのうの日は、名古屋から伊豆まわりの、大がかりな呉服屋が、自動車三台で乗込んで、年に一度の取引、湯の町の女たち、この宿の番頭手代、大勢の女房娘づれ
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)