方今ほうこん)” の例文
然レドモ方今ほうこんヲ防グノ術火攻ヲ除イテハ則チ手ヲ措クベキナシ。ケダシ時勢ノ変ニシテ兵法ノ一定シテ論ズベカラザルモノ也。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
仰せの通り方今ほうこんの女生徒、令嬢などは自尊自信の念から骨も肉も皮まで出来ていて、何でも男子に負けないところが敬服の至りだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は確かに方今ほうこんの大計は、阿部伊勢守以来、上朝廷に下諸侯に分配したる政権を、幕府に蒐集しゅうしゅうし、東照公以来独裁制を擁護するにあるを覰見しょけんせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
聞くがよい。為になるぞ。兄は、方今ほうこん、天下第一の人物じゃで、少し見倣うがよい。わしは一々、兄の真似をしておる
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
御隠居が直書じきしょをもって仰せ出されるほどこの非常時の入費については心配しておらるる次第である、方今ほうこんの形勢は上下一致の力に待つのほかはない
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
方今ほうこん一国の急務と認められている郷土の研究に、いかにしたらこれが利用し得られ、県民としてわが住む土地の実状を、理解せしめる手段または資料となるのか。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかるに方今ほうこん世間の情勢を察するに、父母たる者その児を他人に委ママするをもって当然のこととなし、小児を教育するはその親たる者の本分たることを知らざるものに似たり。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
方今ほうこん、世の識者が小学校の得失を論じ、その技芸の教授を先にして道徳の教を後にするをうれうる者なきに非ず。たとえば、天文、地理、究理、化学等は技芸なり。孝悌忠信は道徳なり。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これには立志伝中の人物、一代の師表しひょうたる先生の御一文を是非々々仰ぎ上げたいのでございます。方今ほうこん世道せどうおとろえ、思想月にすさみ、我等操觚者そうこしゃの黙視するに忍びないものが多々ございます、云々うんぬん
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これを方今ほうこん、我が国内にある上下二流の党派という。一は改進の党なり、一は守旧の党なり。余輩ここに上下の字を用ゆといえども、あえてその人の品行を評してこれを上下するに非ず。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)