斉眉かしず)” の例文
旧字:齊眉
いつも変らぬことながら、お通は追懐の涙をそそぎ、花を手向けて香をくんじ、いますが如く斉眉かしずきて一時余いっときあまりも物語りて、帰宅の道は暗うなりぬ。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
叔母には下枝しずえ、藤とて美しき二人の娘あり。我とは従兄妹いとこ同士にていずれも年紀としは我よりわかし。多くの腰元に斉眉かしずかれて、荒き風にも当らぬ花なり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とそこへ手をいた、すそ模様の振袖は、島田の丈長たけなが舞妓まいこにあらず、うちから斉眉かしずいて来ているやっこであった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……雛に供えたのを放生会ほうじょうえ汐入しおいりの川へ流しに来たので、雛は姉から預かったのを祭っている……先祖の位牌いはいは、妹が一人あって、それが斉眉かしずく、と言ったんだね。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三十五六の屈竟くっきょうおのこ、火水にきたえ上げた鉄造くろがねづくりの体格で、見るからに頼もしいのが、沓脱くつぬぎの上へ脱いだ笠を仰向あおむけにして、両掛の旅荷物、小造こづくりなのを縁にせて、慇懃いんぎん斉眉かしずく風あり。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その野社のやしろは、片眼の盲ひたる翁ありて、昔より斉眉かしずけり。
紫陽花 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
侍女等親しげに皆その前後に斉眉かしずき寄る。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)