数寄者すきもの)” の例文
茶室は小堀遠州の作だと伝えられ、「古月亭」と号されていて、家中や城下町の数寄者すきものたちが、しばしば茶会を催すので知られていた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼がねがったのは、夢想し耽溺たんできすることの快楽を、恍惚こうこつとして実践する風流人の生活、当時の言葉でいうところの数寄者すきものの生活ではない。正反対である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
殿下御秘蔵の水差みずさしふたを取りまして急ぎ聚楽じゅらくまかり上り、関白殿の御覧に供えましたところ、その水差と申しますのは、もとはさかい数寄者すきものの物でござりましたが
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
宿のあるじが気がきいて備えて置いたか、或いはお客のある者が置残して行ったのを、いい無聊ぶりょうの慰めにかつぎ出して、手ずさみを試むる数寄者すきものが、この頃の、不意の、雑多の
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宗匠はそこですずみの会や虫の会を開いて町の茶人だちと、趣向を競った話や、京都で多勢の数寄者すきものの中で手前てまえを見せた時のことなどを、座興的に話して、世間のお茶人たちと
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
勿体ない感じを受ける、東京の数寄者すきものなら一個二十五銭でも悦んで買うだろう。私はこれらのものがあるがために二度益田に足を運んだ。だがどの益田の人が、こんな悦びを受けてくれるか。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)