提唱ていしょう)” の例文
この頃ではこの議を随分ずいぶん自分から提唱ていしょうして、乱れぬ程度でこの女のみにいられた苛酷かこく起居ききょから解放されて居るには居ます。思い出しました。
女性の不平とよろこび (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
宜道はふところに黒い表紙の本を入れていた。宗助は無論手ぶらであった。提唱ていしょうと云うのが、学校でいう講義の意味である事さえ、ここへ来て始めて知った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
和州南都の人で、詩文に深く、草書を能くし、泰勝院細川幽斎公のために、宝永年間、虚堂録きょどうろく提唱ていしょうし、また、折中録は一世に行われた良著だともいわれている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その本国のわがくにでは、たいした会もないのはまことにずかしい次第しだいであるから、大いに奮起ふんきして、世界に負けないようなハナショウブ学会を設立すべきである、と私は提唱ていしょうするに躊躇ちゅうちょしない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
晩食ばんめしの時宜道は宗助に、入室にゅうしつの時間の朝夕ちょうせき二回あることと、提唱ていしょうの時間が午前である事などを話した上
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「野中さん提唱ていしょうです」と誘ってくれると、宗助は心から嬉しい気がした。彼は禿頭はげあたまつらまえるような手の着けどころのない難題に悩まされて、ながらじっと煩悶はんもんするのを、いかにも切なく思った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)