接骨木にわとこ)” の例文
酒ん中へいろんな混ぜものをしやがるんだ、白檀びゃくだんだの、焼いたコルクだのをいれたり、接骨木にわとこの実で色つけまでしやがるんだからさ。
その馬群が投げられた球を追って道端の柵までどっと押し寄せる気配いを受けて、高くいなないてダクを踏んだ馬が一つ、小田島の行手の道の接骨木にわとこの蔭に居る。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
神官は束帯そくたいを脱いでただの人で坐っていた、そして目白の話をしたりしていたが、帰る時に好いついでだからといって接骨木にわとこの小苗を貰って行った、ということがある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
すると、こんもり繁った菩提樹の木のあいだの、すぐりや接骨木にわとこ莢叢がまずみやライラックのしげみの中から、忽然こつぜんとして、古ぼけて、まるで残骸のようになった緑色の四阿あずまやが現われた。
女は歩きながら、歔欷すすりなきをしている。男は黙っている。丁度の公園の前を通っている。暗い、静かな、広い町の上へ、公園の木立の中から、接骨木にわとこの花のが、軽く悲しげに吹いて来る。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
対岸には接骨木にわとこめいたがすがれかかった黄葉をれて力なさそうに水にうつむいた。それをめぐって黄ばんだよしがかなしそうにおののいて、その間からさびしい高原のけしきがながめられる。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小さい花が雪のやうに散つて来る接骨木にわとこの茂つた下で立ち止まつて見たり、又或る時には、ひまはる小さな虫や、芽を出したばかりの草の葉をよく見る為めに地面に屈み込んだりしてゐます。
ななかまどと接骨木にわとこの木だけの、たけの低い小さな庭があって、その叢みの奥に、柿板こけら葺きの木造の小舎がかくれており、擦ガラス入りの小さな窓が一つ見えていた。
蛇麻草ホップの蔓が下では接骨木にわとこやななかまどやはしばみの繁みをすっかり枯らしてしまい、それから柵という柵の天辺をいまわった挙句、上へよじのぼって、折れた白樺を半ばまでぐるぐる巻きにしている。