掌中てのうち)” の例文
此奴こいつまだ卑怯な事は、俺の旦那が薩長の大頭おほあたまと御懇意なのを承知して、首尾よく嬢様を掌中てのうちに丸め込んで旦那のお引立に預からうといふ野心があるのだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「ほんとに憎らしい婆さんだよ。ああやって機嫌を取って、私を掌中てのうちに丸めこもうとするんだよ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
其年九月のはじめ安産あんざんしてしかも男子なりければ、掌中てのうちたまたる心地こゝちにて家内かないよろこびいさみ、産婦さんふすこやか肥立ひだち乳汁ちゝも一子にあまるほどなれば小児せうに肥太こえふと可賀名めでたきなをつけて千歳ちとせ寿ことぶきけり。
若い娘の心の中は、自分の掌中てのうちの如くはつきり讀めると信じてゐる八五郎です。