捨科白すてぜりふ)” の例文
「他人の秘密をあばくなら、刑法に触れるから、それを覚悟でやるがよい」という意味の捨科白すてぜりふを残して、さっさと帰って行きました。
暴風雨の夜 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
新聞に「俺たちに、義理も人情もあるものか」と捨科白すてぜりふした記事がのった、一部の不幸な嘗ての兵士は、遠くない過去において
逆立ちの公・私 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
捨科白すてぜりふを云って、あたりの十手をバラバラと薙ぎ退けながらたちまち姿を隠してしまった。御方は逃げて行くそれに何の未練も持たず、騎馬の与力を振り顧って
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍の太い声が伝二郎の鼓膜こまくへまでびんびんと響いて来た。言いながら手を突っ放したらしい。二、三度よろめいたのち、何とか捨科白すてぜりふを残して、迫り来る夕闇に女は素早く呑まれてしまった。
という、変梃へんてこ捨科白すてぜりふを残しながら三人は、無理に肩をそびやかして出て行った。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父はこう、最後の捨科白すてぜりふを言い残しておいて、もとの部屋に戻って行った。
正勝は喜平を睨みつけながら、捨科白すてぜりふをして部屋を出ていった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
蛇の目の熊は捨科白すてぜりふにこんなことを言うて、引上げた。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
溝口以下の者は、足摺あしずりをして口惜しがったが、手負いを交ぜた七人の小勢では、何とも施すすべもないので、捨科白すてぜりふを言い残したまま駒を返して引き揚げてしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのままの場面で日が暮れると生蕃小僧が忍び入り、柳仙夫婦を惨殺し、うち中を探しまわって僅少の小遣銭を奪い、等々力久蔵に計られたかなと不平満々の捨科白すてぜりふを残して立去るところであった。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを捨科白すてぜりふに釘勘は、腕木門の潜りを押してスッと中へ消え込んでしまいました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一角は、孫兵衛の尾について門を出ながら、捨科白すてぜりふを投げた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)