振向ふりむき)” の例文
おくれ馳せの老女いぶかしげに己れが容子ようすを打ちみまもり居るに心付き、急ぎ立去らんとせしが、何思ひけん、つと振向ふりむきて、件の老女を呼止めぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
大岡殿コリヤ直助と呼び掛けられしに天命てんめいのががたくハイと振向ふりむきしをそれしばれと云るゝを聞き南無三と潛戸くゞりど迯出にげいださんとなすを同心ばら/\と立懸り忽ちなはをぞ掛けたりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
引手あまたでありながら、いままで大凡おおよその女子には振向ふりむきもせなんだそなたが、我から恋をしていると言うからには、定めし相手は稀物きぶつじゃろう……何処どこぞの姫か、くるわ大夫たゆうか。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)