拙僧わし)” の例文
「それはさぞ御心配、多分お濠に棲んでいる獺の悪戯わるさであろう、拙僧わしがちょいと退治して進ぜる。娘御には何んにも仰しゃらぬが宜しい」
ちょうどお前の処に嫁入る半年ばかり前に、拙僧わしの処へコッソリと相談に来おってナ……こう云うのじゃ。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「その折は拙僧わしが説教してやる分のこつちや。なんぼ一揆やかて拙僧わしの説教聴いたら納まるにきまつとる。」
麦酒ビールなら水だから召上るだろうとか、白足袋を差上げようとか、したおびにおこまりだろうとか——すると、番僧が大火鉢で、ひじまで赤いたこをこしらえて、ガンばってあたりながら、拙僧わしにもくれよとか
「やあ、拙僧わしことか、」と、いて坊主ばうずこたへた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこで拙僧わしは望み通りに、真言秘密の御祈祷をしてやって、出て来た孩児ややこはこれこれの処に埋めなさい……とまで指図をしておいたが……それがソレ……その骨じゃ。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そやけど、拙僧わしがお辞儀しとつた事、誰にも言ひなはんなや。言ふと見つともないよつてな。」
拙僧わし北国ほくこくの雲水でござるが、得庵先生御在宅なら、暫く御意を得たいと思ひまして……」
ウチの寺へ石塔を建てて、その細工賃を一年ばかり石屋へ引っかけて、拙僧わしに迷惑をかけとる奴じゃ。ええ気味きびじゃええ気味じゃ。文句附けに来たら私が出てネジて上げる。心配せずに一杯飲みない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「宗仙さん、これは拙僧わしかひなでござりまするぞ。」