扮装つくり)” の例文
旧字:扮裝
それが自分にうつろうがうつるまいが、そんなことは一切合財考えなしで随分可笑おかしな不調和な扮装つくりをしている人が沢山あるようです。
好きな髷のことなど (新字新仮名) / 上村松園(著)
無数の黒い頭がうずのように見えた。彼らの或者の派出はで扮装つくりが、色彩の運動から来る落ちつかない快感を、乱雑にちらちらさせた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お国は下町風の扮装つくりをしていた。物のよくないお召の小袖に、桔梗ききょうがかった色気の羽織を着て、意気な下駄をはいていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
笑いながら、風流べに絵売りの扮装つくりのまま、栄三郎は小銭の袋を手にしておもての往来へ出ていった……同居している泰軒のために小豆を買いに。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかも俳優は其の人らしい扮装つくりをして、其の場らしい舞台に立って演じるのであるが、円朝は単に扇一本を以て、その情景をこれほどに活動させるのであるから
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
例の堅気かたぎ牙彫げぼりの職人らしい扮装つくり、落ちつき払った容子ようすで、雪之丞の宿の一間に、女がたの戻りを待っているのだが、もう顔を見せそうなものだと思いはじめてから、四半とき、半晌
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
さすがに辺鄙ひなでもなまめき立つ年頃としごろだけにあかいものや青いものが遠くからも見え渡る扮装つくりをして、小籃こかごを片手に、節こそひなびてはおれど清らかな高いとおる声で、桑の嫩葉わかばみながら歌をうたっていて
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
丸髷まるまげに、薄色のくしこうがいをさしたお増は、手ばしこく着物を着てしまうと、帯のあいだへしまい込んだ莨入れを取り出して、黙って莨をすいながら、お今の扮装つくりの出来るのを待っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)