手綱染たづなぞめ)” の例文
と思ううちに、ふっと浮いて、鼻筋も、目も、眉も、あでやかに、おぶい半纏ばんてんも、手綱染たづなぞめも、水際の立ったのは、婀娜あだに美しい、その人です。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つね/″\たからのやうに大事だいじがりて、につくものずいりし手綱染たづなぞめおびあげもそのまゝにありけり、いつも小遣こづがひの塲處ばしよなる鏡臺きようだい引出ひきだしをけてるに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また『春告鳥』に「御納戸と媚茶と鼠色の染分けにせし、五分ほどの手綱染たづなぞめ前垂まえだれ」その他のことを叙した後に「意気なこしらへで御座いませう」といってある。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
おなじ筋を、しかしほとんど真直に、すっと、触るもののないように、その、おぶい半纏の手綱染たづなぞめが通りました。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
本字で(奇駒きく)とよませたのだそうでありましたが、いや何しろ——手綱染たづなぞめ花片はなびらの散った帯なにかで、しごきにすずをけて、チリリン……もの静かな町内を
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)