所夫おっと)” の例文
直は眼をみはった。直は倒れている所夫おっとの仁蔵を見た。其処そこには所夫のかわりに一匹の大きな狸が血まみれになって倒れていた。
狸と同棲する人妻 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
左すれは貴公の鑑定では先ず奸夫まおとこと見たのだナ奸夫かんぷが奸婦としのび逢て話しでも仕て居る所へ本統の所夫おっとの不意に帰って来たとか云う様な訳柄わけがらで(大)爾です全く爾です
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
わけをたずねると、舅と所夫おっとを虎にい殺された上、今度はまた子供まで啖い殺されたのだという。わしは、その婦人に、ではなぜこんな恐ろしい山の中に住んでいるのかと訊ねて見た。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「この悪魔、私の所夫おっとをこんなにしておいて、まだひどいことをしようというのか」
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かくも不規則なる所夫おっとに仕え細君がく苦情をならさぬと思えば余は益々いぶかしさにえず、ついに帳番に打向うちむかいて打附うちつけに問いたる所、目科の名前が余の口より離れ切るや切らぬうち帳番は怫然ふつぜんと色を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)