懸人かかりゅうど)” の例文
「十兵衛殿とやら、よけいなところへ、出しゃばるものじゃない。おぬしは、まだ部屋住へやずみ同様な——しかも明智入道の懸人かかりゅうどの分際ではないか」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうして、あれほどきびしい平家の付人つけびとの眼をくらましたか、関東へのがれて、身をひそめ、今では、奥州みちのくの藤原秀衡ひでひら懸人かかりゅうどになっているとやら……」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここの院主との旧縁で、ふと去年の暮から懸人かかりゅうどとなって来たが、自分は、何の寺役を持つでもなし、命松丸ときては、あのとおり口達者で、悪戯わるさざかりだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
壮気はさかんだが、世間見ずの有村は、この屋敷の懸人かかりゅうどになってから、いっぱしの武芸者となった気でいる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒など飲むと、舞をよくするし、剽気ひょうげたところがあって、おもしろい男だというので、頼朝にひき留められ、この配所に、もう半年の余も懸人かかりゅうどになっている暢気のんきな男だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おらは、ここの懸人かかりゅうどだ。小六様に飯はいただいているが、まだ奉公人にはなっていない」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「駿河殿と見うけたり。織田家の懸人かかりゅうど桑原甚内、御首みしるしをいただきに推参。お覚悟あれッ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼朝はまた、奥の棟へ自分から足を運んで、そこにいる懸人かかりゅうどの藤原邦通へ話しかけた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「え。清原流の先生が、お寺に四年も懸人かかりゅうどになっていたことがありましたから」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「初めて、お目にかかるが、かねて小六殿の尊名と共に、お名は承知いたしています。——それがしは、道三秀龍様の幕下、明智光安が宅におる懸人かかりゅうど——甥の十兵衛と申す若輩にござります」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや亭主ではないと、あそこの内儀がいった、懸人かかりゅうどだろう」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、探題殿の懸人かかりゅうどの……琵琶法師とかいう母子おやこのお方か」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい。これは念仏堂の懸人かかりゅうどにございまする」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懸人かかりゅうどは不自由じゃのう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)