憂事うきこと)” の例文
時頼が六尺の體によくもになひしと自らすら駭く計りなる積り/\し憂事うきことの數、我ならで外に知る人もなく、只〻戀の奴よ、心弱き者よと世上せじやうの人に歌はれん殘念さ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
賣代うりしろなし此旅籠屋は少しの縁由ゆかりも有りけるまゝ下女に雇はれ候ふなり先頃貴方あなたの御めぐみに預るのみか取り分て下し給ひし一品はとみたる人の千金にまして忘れぬ御恩なり今夜にせまる貴方の御難儀大概たいがい御察し申たり今夜は私が何なりとお救ひ申し參らせん御安堵あれと請合うけあひながらも過さりし親の病苦びやうくや身の憂事うきこと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
或は須磨を追はれて明石の浦に昔人むかしびとの風雅を羨み、重ね重ねし憂事うきことかずへ忍ぶ身にも忍び難きは、都に殘せし妻子が事、波の上に起居する身のせんすべなければ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
御容おんかたちさへやつれさせ給ひて、此年月の忍び給ひし憂事うきことも思ひやらる。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)