惨死ざんし)” の例文
あれから僅か十日余りの間に、国技館の活劇、風船男の惨死ざんし、斎藤老人殺し、畑柳夫人の家出と、事件は目まぐるしく発展しました。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「君は覚えているだろう」と彼は声をとして云った。「あのきんという惨死ざんし青年が或る中毒にかかっていたことを」
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは数月前すうげつぜんに自動車にかれて惨死ざんしした山脇やまわきと云う書生の顔であった。書生の顔は正面まともに主翁の眼に映った。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うです? 奥さん。僕お願いなのですが、電車で行って下さることは出来ないでしょうか。兄の惨死ざんしの記憶が、僕にはまだマザ/\と残っているのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私はまだ火をともさない店先の薄明りで、あわただしく表紙をはぐって見ました。するとまっ先に一家の老若ろうにゃくが、落ちて来たはりに打ちひしがれて惨死ざんしを遂げる画が出て居ります。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人の惨死ざんしを見ると、人間はわすれていた兇暴きょうぼうがたけりだす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その朝、殆ど時を同じうして、麗子は迷路の中心で、二郎少年はメリー・ゴー・ラウンドの木馬の上で、折枝は空中の風船から墜落して惨死ざんしをとげた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
半年とたたない間に、第一に電気学会の幹事会に爆弾をほうりこまれて幹部一同が惨死ざんしをする。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
捜査課長の幾野氏の惨死ざんし事件を考えてみるのに、あれは赤外線男なら勿論もちろん出来ることであるが、それと同時にあの部屋にいた人間にも出来ることではないかと思いかえしてみた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いまのいままで、惨死ざんししたとばかり思っていた兄の荘六までが、警官や手術衣しゅじゅつぎの人達の肩越しに、私の方を向いてニコニコ笑っているではありませんか。ああ私は何か夢を見ていたのでしょうか。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)