おじ)” の例文
助役は、急にサッと顔色を変えると、物におじけた様に眼を引きつけて、ガクガク顫えながら暫く口も利けなかった。が、やがて
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
皆々おじけ立って、誰一人その行手をさえぎる者もなく、賊は無人の境を行くが如く、遂に門外へ消えてしまった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしそういう言葉におじけてはいけないので、立春と関係があるか否かを決めるのが先決問題なのである。それで今日にでもすぐ試してみることが大切な点である。
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
どういう訳も糞もあるか、気の利いたことをいうな、ともう喧嘩腰で、その男は威嚇いかくするようにスコップを振りあげた。おじけづいた李聖学と沢田は後すざりし始めた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
けちをつけようと思うなら、一座の中でそんな尻ぬけたことを口走りはしない。ひょッとすると、あとの三人にもおじけづかして喰わせずにしまうかも知れねえじゃねえか。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一視同律であまりにきびしく批判すれば、初心の人はおじけ、または恨むであろう。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「それにしても先方に位がある、威におじけたかも知れぬ」
少年のようにおじけていた彦太郎も酒のために勢が回復し、次第に平常通りの彼に返って来た。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)