忠信ただのぶ)” の例文
男が驚きの声を上げたので、ふと見上げると、生茂った造花の桜の枝越しに、菊人形のきつね忠信ただのぶの青白い顔がすぐ頭の上に漂っていた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二部興行で、昼の部は忠信ただのぶ道行みちゆきいざりの仇討、鳥辺山とりべやま心中、夜の部は信長記しんちょうき浪華なにわ春雨はるさめ双面ふたおもてという番組も大きく貼り出してある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「じゃあ、あの、親狐おやぎつねの皮で張ってあるんで、静御前がその鼓をぽんと鳴らすと、忠信ただのぶ狐が姿を現わすと云う、あれなんだね」
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
従う人々には、佐藤忠信ただのぶ、堀弥太郎やたろう伊勢いせ三郎など二百余騎の家人けにん、みな義経にならって拝をした。そして、粛然しゅくぜんと、ちりも散らさず、都を後に去った。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ、佐藤継信つぎのぶ忠信ただのぶ兄弟の妻、二人都にて討死せしのち、その母の泣悲しむがいとしさに、我が夫の姿をまなび、老いたる人を慰めたる、優しき心をあわれがりて時の人木像にきざみしものなりという。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けふのひるから忠信ただのぶくまどりあかいしやつつら
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いずれ郡代ぐんだいの方からなんとか云って来るだろうから、今のうちに手廻しをして置く方がいいな。噂を聞くと、狐はいろいろの物に化けるらしい。今に忠信ただのぶくずにも化けるだろう。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はやもひるから忠信ただのぶ紅隈べにくまとつたしやつつら
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)