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御調
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おしら
遽たゞしく
叩き起し急用あれば
爰開給へといふに吉五郎は
戸を
明けながら急用とは
如何なることにやと申しければ佐兵衞は
息をきりながら
今名主樣の
玄關にて御奉行樣の
御調べがあるゆゑ貴樣を
潰し
夫は又何事なるやと
惘れ
居たり一
體此吉五郎と云者は
極正直にて人のよき
事竟に一度も人と
物爭ひなどしたる
試しなく町方住居の者には
稀なる故皆々近所にても
佛吉々々と
渾名なす程の者なれば今御奉行樣が
直の
御調べと聞て
暫時無言なりしが
稍々震へ聲を