御簾中ごれんちゅう)” の例文
で、藤のつぼねの手で、隔てのおふすまをスツとける。……其処そこで、卿と御簾中ごれんちゅうが、一所いっしょにお奥へと云ふ寸法であつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そんな噂が御簾中ごれんちゅうへきこえたのでござりましょう、唄の上手なおもしろい坊主がいるそうなが、いっぺんその者をよこすようにとのお使いがござりまして
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もし信忠様の御簾中ごれんちゅうに、御懐妊の方でもあれば、御産のひもの解かるるを待って、御男子か女子かの上までお見とどけ申しあげた上、さてと、かような会議も開かるべきに
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ、手前どもにはよくわかりませんが、お屋敷方の御隠居でも若様でも御簾中ごれんちゅうでも御帰国御勝手次第というような、そんな御改革はだれがしたなんて、慶喜公を恨んでいるものもございます。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其処そこで、御簾中ごれんちゅうが、奥へ御入おんいりある資治卿をむかえのため、南御殿みなみごてんの入口までお立出たちいでに成る。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よもや後宮こうきゅうのおんかたまではと、さし控えておりましたが、何と、足利家の執事、こう師直もろなおのごときは、とうに御簾中ごれんちゅうへ近づきを得て、准后のお覚えもいとめでたいそうでございまするで
いや、その時は、しかも子供に菊を見せながら、えん莞爾にっこりしたその面影ばかりをなごりに、人ごみに押隔おしへだてられまして、さながら、むかし、菊見にいでたった、いずれか御簾中ごれんちゅうの行列
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丹羽、滝川、池田、蜂屋、細川、蒲生がもう、筒井など順次に拝儀は終った。——そして人と席とはそのまま、この夜——故信忠卿の御簾中ごれんちゅうより被下くださる——とあるおときへ移って酒宴となった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう一通の目録は、御簾中ごれんちゅう、ほか奥向女房衆へのものであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)