御弟子みでし)” の例文
どうせ死ぬなら、容相かたちだけでも、釈尊の御弟子みでしになってけ。せめてものよしみ、引導いんどうだけは授けて進ぜる。眼をふさいで、静かに膝をくむがよい。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう心だけは仏の御弟子みでしに変わらないのですが、私には御承知のように年のゆかぬ子供がいることで、この世との縁を切りえずに僧にもなれない」
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
わかい身そらに、御奇特な、たとえ御自分の心からではないとして、その先生様の思召おぼしめしに嬉し喜んで従わせえましたのが、はや菩薩の御弟子みでしでましますぞいの。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神、その独子ひとりご、聖霊及び基督の御弟子みでしかしらなる法皇の御許によって、末世の罪人、神の召によって人を喜ばす軽業師かるわざしなるフランシスが善良なアッシジの市民に告げる。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
もろ/\御弟子みでし之をめぐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
白髪はくはつの僧も、十歳の童僧も、仏のおん目からながめれば、ひとしく、同じ御弟子みでしであり、同じ迷路の人間である」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御弟子みでしになった上でこんなことでは仏様も未練をお憎みになるでしょう。俗であった時よりもそんな罪は深くて、かえって地獄へも落ちるように思われます。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
主殿とのもじゃ。いや、いまでは禅師の御弟子みでし、鉄雲。——昨夜、師のお宿へ、おん身から長い書状が届き、わしも披見したので、よそながら、お別れに来た」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを成就させるためには、より多く仏の御弟子みでしとして努めなければならないでしょう。
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「えへん」次の間に、侍側じそくしている御弟子みでしがございます——ということを知らせるつもりで、軽くしわぶきをした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いったんはいった仏の御弟子みでしの道も妨げておしまいになることであろう、もうすでに宮は知っておいでになって、その話を大将へくわしくはあそばさぬようにと頼んでお置きになったために
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「どうぞ、この草庵に置いて、私たちを御弟子みでしにしてくださいませ」いい終ると、ふたりとも、そこへあでやかな黒髪を投げ伏して、さめざめと泣くばかりだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ですが……。いや、さもございましょうが、なにとぞ、御弟子みでしの公孫勝に、ここしばし、いとまをおつかわし給わりませ。かくのごとく、伏してお願いつかまつりまする」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)