御存ごぞんじ)” の例文
こんな者に見込れて、さぞ御迷惑ではゐらつしやいませうけれども私がこれ程までに思つてゐると云ふ事は、貴方も御存ごぞんじでゐらつしやいませう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「お定、きょうは幾日いくにちだっけねえ」と、日も御存ごぞんじないことがある。たまたま壁の暦を見て、時の経つのに驚きました位。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
え、証人が倉「はい有ります、御存ごぞんじの通り一昨夜はいつもより蒸暑くてそれにリセリウがい所天おっとに分れうちまで徒歩あるいて帰りましため大層のどが乾きまして、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
学校時代の私は、銀子さん、貴女御存ごぞんじ下ださいますわねエ——の一時バイロン流行の頃など、貴女を始め皆様みなさんしきりに恋をお語りなさいましたが
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
○洋服の形は皆様御存ごぞんじの通り、背広、モオニングコート、フロックコート、燕尾服えんびふくの類なり。背広は不断着ふだんぎのものにて日本服の着流しに同じ。モオニングコートも儀式のものにはあらず。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たとえ男が長い冬の日を遊暮しても、女はく働くという田舎の状態ありさまを見て、てんで笑って御了いなさる。全く、奥様は小諸の女を御存ごぞんじないのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「先生が御存ごぞんじなかつたとは驚きましたねエ」と春山は容子つくろひ「あの、海軍大佐の松島様へ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今更新く申上げませんでも、私の心は奥底まで見通しに貴方は御存ごぞんじでゐらつしやるのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
支那人の頭は御存ごぞんじでしょう、三ツに分て紐に組ます
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「それじゃ未だ私の心を真実ほんとう御存ごぞんじないのですわ。私はこうして酔って死ねば、それが何よりの本望ですもの」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「サ、其の男のはうを此の篠田先生が御存ごぞんじなので、色々御話を承つて居たのだがネ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
でも、叔父さんなぞは御存ごぞんじないでしょうが、宅でまだ川向に居ました時分——丁度私は一時郷里くにへ帰りました時——向島が私の留守へ訪ねて来て、遅いから泊めてくれと言ったそうです。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)