後塵こうじん)” の例文
「堀川君。海軍の礼式じゃね、高位高官のものほどあとにさがるんだから、君はとうてい藤田さんの後塵こうじんなどは拝せないですよ。」
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二百余名の甲府勤番がそれで納まるか知らん、駒井を頭にいただいて唯々諾々いいだくだくとその後塵こうじんを拝して納まっているか知らん。
大江山は今や決死的覚悟をめた。このままでは、これから先、彼の後塵こうじんばかりをおがんでいなければならないだろう。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼をしてもし伝道師たらしめば、あるいはロヨラの後塵こうじんを拝せしならん、あるいはザウイエルの下風に立ちしならん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
わが国の映画界や多数の映画研究者・映画批評家はいたずらに西洋人の後塵こうじん追蹤ついしょうするに忙しくて
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かつては封侯ほうこうをも得たその老将がいまさら若い李陵ごときの後塵こうじんを拝するのがなんとしても不愉快だったのである。彼は陵の軍を迎えると同時に、都へ使いをやって奏上させた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わたくしが浮世絵を見て始て芸術的感動に打たれたのは亜米利加アメリカ諸市の美術館を見巡みまわっていた時である。さればわたくしの江戸趣味は米国好事家の後塵こうじんを追うもので、自分の発見ではない。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ちいッ、とトムは舌うちをして、彼等の後塵こうじんいてゆくことをやめた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つけられ東京ツ子はむなしくその後塵こうじんを望む事が多い。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)